[ 株式会社 洋電社 ]
TOP 会社概要 取扱商品 メーカーリンク 洋電タイムス リクルート



93号(平成27年夏号)


今朝のはなし 三原幸二

 車が故障したので、久しぶりに電車で出勤することになった。
 時刻表も見ずに切符を買い改札口を入ると、ちょうど電車が着いたところで、階段には人があふれていた。人ごみに押されながら、やっとの思いでホームにたどり着き、電車に乗ろうとしたが、発車のベルと共にドアが閉まり、走り出してしまった。
 待つこと十五分、次の電車が来た。通勤時間のため、車内は大変な混雑である。
 次の駅で、私のはす向かいの席が空いた。その空席の前には、二十歳くらいの娘さんが立っている。左隣りには、ジーンズの上からシャツを出した高校生ふうの若者。右隣りは、誠実そうなサラリーマン風の青年である。
 空席に座る一番の「資格者」は、娘さん。二番目、若者か青年。少し離れて立っている私は、四番目か、五番目だろうか。
 しかし、すし詰めの電車の中で、疲労困憊している私にとって、この席は、炎天の砂漠のなかで清水が湧き出るオアシスを見つけたようなものだ。そのオアシスが目の前にあるのに、娘さんも若者も青年も、座る気配さえ見せない。娘さんなどは、片手に重そうな荷物を持って本を読んでいる。
 その間、ほんの数秒であったが、私にはとても長い時間に感じられ、この三人は座る気がないのだと合点した。
 私は思わず「よろしいですか」と声をかけた。「どうぞ、どうぞ」という娘さんの声で、私は座らせて戴くことにした。乗り込んできた乗客の波が、左右から押し寄せてくる。オアシスを手に入れた私は、ホッとした気分で目を閉じながら、いろいろと考えてみた。
 この若い人たちは、なぜ座らなかったのだろう。人を押しのけるようにして座る若者を、今までに何度も見たし、社内の床に座り込み、携帯電話をかけつづけている若者も見てきた。
 目の前の三人は、座りたい気持ちはあるのに、相手の気持ちを思って席をゆずったのだろうか、あるいは取りあいになるのを気兼ねして、自分の気持ちを押さえたのだろうか。
 いずれにしても、この人たちは、他人に気づかいのできる、すばらしい心の持ち主たちである。
 ちゃっかりと安楽を決め込んだ中年のおっちゃんは、わが沿線にもすばらしい若者たちがいることを朝から気付かせてもらい、この幸せなひとときのおかげで、心うきうきと会社へ向かったのである。
   (2001年1月執筆)

・第46回 新春交換会

平成27年1月10日


平成27年度方針
 「お役に立とう 洋電社」


・第38回洋電社オープン

 平成27年6月8日
 春日台カントリークラブ